電話ほど人の時間を奪うものはない

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電話というのは、一方的に人の時間を奪うものだ。
そういう前時代のツールを使い続けているような人とは、付き合わないほうが良い。

堀江貴文『多動力』幻冬舎(2017年) p79

これは「人の時間を90分も奪う医者 vs 僕」の戦いの記録。

仕事上、医者と電話で話すこともあるんですけど、これほどまでに強烈な人に出会ったの初めて。

というノンフィクションの話。

世の中ってさ、ホントにいろんな人がいるよね。

もくじ

ある日の午後5時

今日もあと30分で終業。

キンキンに冷えたビールを飲んで1日の疲れを癒やす。それだけで十分幸せなんだよな。

そんなことを考えていると会社の電話が鳴った。

「あ、どうも。白い巨塔(仮名)です」

※以下、巨塔と表記。

Round 1:いま、診療時間中ですよね?

巨塔:「もしもし? 私です」

僕:「あ、先生こんにちは。お疲れさまです」

巨塔:「あれ、今日は有給じゃなかったの?」

僕:「やらないといけない仕事がたまっていたので…」

巨塔:「そうなの? ふーん。それにしても今日は季節はずれの暑さだね〜」

僕:「えぇ、暑いですね」

巨塔:「でさ、送ってもらった書類の件だけど…」

僕:「そうでしたね。お送りしました。いかがでしたか?」

巨塔:「結論から言うと、この内容は何がしたいのかさっぱり分からないね」

僕:「そうですか?本社から届いた書類なので、先生には目を通していただいた方がいいと思いましてお送りしました」

巨塔:「あのねー、さっぱり理解できないね」

僕:「はぁ…」

巨塔:「うん、まったく理解できないね」

僕:「まぁ、確かにこれを我々のエリアで行う必要性は感じませんよね」

巨塔:「そうだねー。う~ん、まったく理解できないね」

僕の心:(さっきから同じことばっか言ってんなー)

僕:「ちなみに先生、いま診療時間中ですよね?お時間は大丈夫ですか?」

巨塔:「あ~まだ大丈夫だよ。患者さん来たらいったん電話切ってまた連絡するから」

僕の心:(はやく患者さん来てくれ。もう電話切りたい)

僕:「そうでしたか、失礼しました」

巨塔:「ほんっとにさ~、理解できないよね~」


そもそも平日の夕方って患者さんたくさん来る時間だよね?こんな長電話してて大丈夫なの?

てか、なんでこんな長電話できるの?

あなたホントに医者ですか?

Round 2:なぜ患者が来ないのか?

巨塔:「この件ってさ、本社に質問とかできないの?言いたいこと山ほどあるんだけど」

僕:「質問受付フォームがネット上にありまして、そこに書いていただければ本社に意見が届きます」

巨塔:「あ、そうなの?じゃあさ、あとでFAXしておくから、それ打ち込んどいてくれない?」

僕の心:(めんどくさ!それくらい自分でやれよ)

僕:「私がですか?この件については、先生の思いやご不満な点がおありかと思いますので、先生が直接書かれた方がより先方に伝わりやすいと思いますが?」

巨塔:「あのね、私は診療で忙しいんだよ。そんなの打ち込んでる時間なんてないよ。それはあなたの仕事でしょ?私は患者を診るのが仕事なんだから」

僕の心:(はぁ!?なに言ってんだ?だったら長電話なんてしてないで今すぐFAX送ってこいや!てか、FAX送るとか言ってるけど、そのままフォームに打ち込んだ方が早くね?)

僕:「わかりました。それではFAXをお待ちしております。よろしくお願いいたします」

巨塔:「分かったよ。でもさ、不満を述べるにはどういうふうに書くと伝わるかな?」

僕の心:(?????、思いの丈をそのまま書けばいいんだよっ!)

僕:「先生が今感じておられることをそのまま文字にするとよろしいのでは?」

巨塔:「う~ん、思ってることはあるけど文字にするのって難しいよね」

僕の心:(カオス!てか、もう30分以上経ってるぞ!なんで患者が来ねーんだ?)

僕:「先生、先ほどから電話が続いてますが診療時間中ですよね?大丈夫ですか?」

巨塔:「あ~まだ大丈夫だよ。患者さん来たらいったん電話切ってまた連絡するから」

僕の心:(デジャブ!さっきと全く同じ!)

僕:「そうでしたか。とにかく先生の方でフォームに打ちこんでいただいた方がいいように思います」

巨塔:「そう?でも、知ってると思うけど、私パソコン苦手なんだよ」

僕の心:(知らん!初めて聞いたわ!)

Round 3:まだ続けます?

巨塔:「とにかくさ、あとでFAX送るから。そっちでフォームに打ち込んどいて。よろしく」

僕:「かしこまりました。それでは…」

巨塔:「あー!あのさ、別件で話したいことがあるんだけど」

僕の心:(もう1時間だぞ?…まだ続けんのか?)

僕:「……何でしょうか?」

巨塔:「今までの話は送ってもらった書類のAに関することでしょ?Bのことなんだけどさ」

僕:「Bですか?それはその書類に書かれているとおりだと思いますが」

巨塔:「あのねーさっぱり理解できないね」

僕の心:(再デジャブ。Bは単なる連絡事項だから!あなたホントに医者ですか?)

僕:「そうですか?これは連絡事項でして、これから○○になるということが書いてあるだけですので…」

巨塔:「そんなことは分かってますよ。私が言いたいのはこのBについての本質が知りたいんです」

僕の心:(本質?BはBなんだよ!)

僕:「先生、本質というのはどういうことでしょうか?私には勉強不足のためよく理解できません」

巨塔:「ん~そうだよね。難しいよね、この本質は。すごく難しい」

僕の心:(オメェの言ってることの方が難しいわ!)

僕:「…」

巨塔:「聞いてる?」

僕:「はい、聞いております」

巨塔:「正直さ、今回の書類にあるAもBもさっぱり理解できないんだよね。どゆこと?」

僕の心:(どゆこと?え?ここで「ふりだしに戻る」ですか!?)

僕:「先生!あのー、もし差し支えなければ私の方で質問のたたき台をつくりましょうか?それを先生に確認いただいてOKであれば、私がそのままフォームにコピペして送信しておきます」

巨塔:「あ、そう?お願いしていい?最初からそう言ってくれればよかったのにー!あ、もう6時半になっちゃうね。長い間ごめんねー。じゃ、よろしく!」

僕:「いえ、失礼し…」

ツー、ツー、ツー。

マジカオス。

電話ほど人の時間を奪うものはない

こうして僕は白い巨塔に終始ペースを奪われ敗北したわけですが、実際にはもっともっと長い会話をしています。

90分も時間を奪われた挙げ句、最後には面倒な仕事が増える始末。こんな案件はね、メールでいいんだよ、メールで。あ、そういえばパソコン苦手だったな。

電話というのは、一方的に人の時間を奪うものだ。
そういう前時代のツールを使い続けているような人とは、付き合わないほうが良い。

堀江貴文『多動力』幻冬舎(2017年) p79

まさにコレ。堀江氏の著書「多動力」に書いてあったこの言葉をマジで白い巨塔に捧げたい。

電話ほど人の時間を奪うものはない。


さて、帰ろう。

今日はもう350mlのビールを2本飲もう。

その方が幸せになれる。


そゆこと!

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